リクSS”早霖”…かこれ?

 大変お待たせしました。さなスイさんのリクで早霖SSです。

 もう先週中にはupする予定だったのに遅くなってしまい申し訳ありません。

 早霖は個人的に結構好きなカプなんですが、これ早霖っていっていいのかな……。

 まあ、とりあえず前置きはこれぐらいにしてどうぞ読んでみてください。

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・早霖SS

 霖之助はその日、久々に無縁塚にお宝探しに行っていた。当初の予定では昼過ぎぐらいまでには帰る予定でいたのだが、なんだかんだとしているうちに思っていた以上に時間が経っていたようだ。香霖堂に帰ってきたころには空は茜色のきれいな夕焼けに染まっていた。

 店の中に入ると背負っていた今日の収穫を床に降ろす。時間をかけただけあって今日の収穫は良好でった。そのせいで、思った以上に荷物が多くなり持ち帰るのに苦労したが、うれしい悲鳴といったところだろう。肩を回して疲れを和らげながら、一息入れていると店の奥からパタパタと足音が近づいてきた。

「おかえりなさい霖之助さん」

「ただいま早苗」

 店の奥から霖之助を出迎えに出てきたのは守矢神社の巫女、東風谷 早苗だった。奥で料理でもしていたのか、早苗はいつもの巫女服姿の上にエプロンをつけている。

「すまない、少々帰るのが遅くなってしまった。留守番中に何かあ

ったかい?」

「いいえ、何もなかったですよ」

 店内を見渡すが確かに朝出たときと変化は見られない。いや、正確には変化はあった。おそらく早苗が掃除や片づけをしてくれたのだろう、カウンターの上や棚がきちんと整えられているし、店の端や窓枠、棚の上などに溜まっていた埃も綺麗に掃除されていた。

「掃除までしてくれたのか、ありがとう」

「気にしないでください。収穫はどうでした?」

「なかなかのものだよ」

 霖之助は持ち帰ってきた今日の収穫を早苗に見せた。大小さまざまな箱状の機械や、形も色彩も様々なのに同じ名前を持つ道具など、他の人たちから見たらガラクタといいそうなものだが、これはすべて外の世界で作られた道具の数々だ。使い方がわからないだけで、決してガラクタなどではないと霖之助は思っているのだが、残念ながら理解してくれる者は少ない。前に魔理沙に見せたときには、使えないんじゃ結局はガラクタじゃないかと言われたこともあった。

「え~と、CDラジカセに携帯ラジオ、VHSテープ……ずいぶんと外の世界でも古いものばかりですね」

「そうなのか? まあいい、後でこれらの使い方を教えてくれ」

 霖之助にとって外の世界から来たという早苗の知識はとても重要なものである。なにせ霖之助の能力で判るのは名前と用途だけ、つまり肝心の使い方が判らないのだ。ゆえにその使い方を知っている早苗の知識は、霖之助にとってとてもありがたかった。

「いいですけど、もう少しで夕飯の準備が出来ますから食べ終わってからにしましょう。お風呂の準備が出来てますから夕飯の前に入

ってしまっては?」

「ああ、そうさせてもらうかな。さすがに汗とか土が体についたまま食事をいただくのもあれだしね」

「どうせだから、お背中でもお流ししましょうか?」

「いや、さすがにそこまでしてもらわなくていいよ」

 はははと笑いながら風呂場に向かう霖之助を横に、早苗はとても残念そうな顔をしていた。

 霖之助が風呂から戻るとすでに食事の用意がしてあった。机の上にはご飯に味噌汁、焼き魚にサラダ、付け合せの漬物等が霖之助と早苗の二人分用意されて、早苗が席について待っている。

「お湯加減いかがでしたか?」

「ああ、丁度よかったよ。 おいしそうな夕飯だね。でも、家には魚も野菜もなかったと思うが?」

 妖怪と人間のハーフであるためか、霖之助は人間が生きるために必要とする栄養補給、つまり食事を必要としないのだ。彼にとって食べるというものは完全に趣味、娯楽の領域にあるものであり、それ故に常備してある食料は保存の利く物意外は酒とその肴ぐらいのものである。だから魚などの生ものや野菜は基本的には置いてないのだが、今食卓に並んでいるのは明らかにそれだった。

「神社から持ってきたんです。昨日人から大量にいただいたのがあったので」

「そうなのか、わざわざすまないな」

 どうやら早苗が持ってきたものらしい。

「ささ、どうぞ冷めちゃう前に食べてください」

「じゃあ、いただくとするか」

 席に着き焼き魚に箸をつけ口に運ぶ。心地よいうまみが口の中に広がる、味付けも焼き加減もバッチリだ。

「どうですか?」

「ああ、おいしいよ」

 サラダも味噌汁もなかなかの出来だった。霖之助は今まで何度か早苗の作った料理を食べていたが、しだいに段々腕が上がっている気がする。腕自体もあがっているのだろうが、何よりも段々と霖之助は早苗の料理に惹かれる物を感じていた。なんというのだろう、好みの味というのが一番正しいだろうか。

「ふむ、君は料理が上手なんだな。おいしくて、ついつい食べ過ぎ

てしまいそうだ」

「そんな、褒めすぎですよ」

「特にこの味噌汁なんて、毎日でも飲みたいぐらいだよ」

「ふぇっ!?」

 霖之助の何気ない一言で早苗の顔が茹蛸のように赤くなる。

「ん、どうしたんだい?」

「ああ、あの霖之助さん、それっていわゆるプロ、プロポ……」

「? もちろんさっきのは単なる冗談だから気にしないでくれ」

「ははは……ですよ、ね。あはは、はぁ~、一人で舞い上がってバカみたい」

「毎日なんていったら君に迷惑がかかるだろうからね。でもたまに作ってくれると嬉いかな」

「……あの、もしかしてわかっててやってます?」

 無論、霖之助は本心から言ってただけで特に意味があったわけではなかったが、それはそれで始末が悪いと言うものだろう。他の人が聞けば100人中100人が告白と勘違いしそうな言葉を、さらっと口にしてしまうというのだから。

「でも私は霖之助さんさえよければ毎日ご飯を作ったり、お掃除したり……」

「いやそれはさすがに悪いだろう」

「全然大丈夫です」

”大丈夫って、神社の仕事はどうするつもりなんだ”

 最近は本当に早苗が週に何回も朝から晩まで店にいるので、霖之助はそのことが心配だった。来てくれるの自体はありがたいとは思っている、掃除等の家事をやってくれるし店の手伝いもよくしてくれて助かるのだから。でもあくまで早苗の本業は巫女である。やること自体は色々とあるはずだが、毎日店に来ていて家の者に何も言われていないのか、それだけが気がかりだった。

「霖之助さん、ご飯のお代わりはいかがですか?」

「ああ、お願いするよ」

 だが、そんな霖之助の心配を余所に早苗は楽しそうに霖之助から受け取った茶碗にご飯を山盛りに盛っていく。

 霖之助や早苗がどう思っているかはしらないが、二人の光景ははたから見るとまるで恋人というか、結婚したてで幸せいっぱいの新婚夫婦のようであった。そんな微笑ましい光景とは裏腹に二人のすぐそばではドス黒いオ~ラが漂わせながらその様子を恐ろしい目つきで見つめる4つの瞳があった。

片方は黒と白の服装で三角帽子のいかにも魔法使いといった容姿の小女、もう一人は赤と白の変わった形の巫女服で頭にリボンをした小女。普通の魔法使い霧雨 魔理沙、楽園の巫女博霊 霊夢である。二人の目は憎しみ、怒り、嫉妬といったどす黒い炎で燃え上がっており、その視線の先には店内で霖之助と一緒に仲睦まじく食事をしている早苗に向けられていた。二人の不機嫌な理由は当然ながら早苗が霖之助と二人でラブラブな空間を作り出していることだ。

「早苗ったら、ずいぶんと見せ付けてくれるわね」

「てか、通い妻は私のポジションだったんだぜ。それをいきなり横から奪いやがって」

「霖之助さんも、霖之助さんよ掃除とかご飯とかに釣られちゃって、なさけない」

 正確には釣られていないのだが、連日通い妻のように店に来ては家事をして、二人でいい感じの空気を作り出してるのを、はたから見ている側からしたら完全に釣られるように見えてしまう、というか見えないほうがおかしいだろう。

「ていうか、私が料理とか作ってもあんな雰囲気なんないんだけど、どういうこと。なに、胸? 胸だっての?」

「香霖のやつ、そんなに大きい胸がいいってのかよ。私だって早苗ほどじゃなくても胸はあるっつうのに。将来的には早苗なんか足元にも及ばないほど大きく」

「はっ、魔理沙のどこに胸があるっていうのよ。どう見てもまな板と大差ないじゃない」

「お前が人のこと言えた体格かよ。それに少なくともお前よりはあると思うぜ」

「どんぐりの背比べって言葉知らないの魔理沙。それに私よりも大きいなんて聞き捨てならないわね。いい機会だし白黒はっきりさせましょうか?」

 早苗のことなんて忘れて、今にもお互いにつかみかかりそうな雰囲気だ。妙な緊迫感があたり一帯に広がり、今まさに戦いが始まろうかと……

「あ、こぼしちゃいました、ドレッシングが胸に」

 店内から聞こえた声に一気に緊迫した空気が霧散する。中をのぞけば、服の胸元を拭いている早苗が見える。どうやらサラダが胸に落ちてドレッシングが服についたようだ。その光景を見て二人はお互いに自分の胸元を見下ろす。二人とも落とした食べ物を胸が受け止めたことなどない。

「人生って不平等よね」

「ああ、憎たらしいくらいにな」

 もう、先ほどまでの互いへの怒りなどなくなっていた。今は目の前の雑魚より、ボスを叩くのが先と互いが互いの中で結論付けたのだ。

 そもそも、霖之助の早苗に対する態度が二人と違うのは単に二人に日ごろの行いのせいなだけなのだが、二人がそれを知る由もなかった。

「てか早苗の野郎、ガンガン攻めてきやがるな」

「完全に落とすツモリがバリバリみたいね。って、あ~っ! 見て魔理沙、早苗ったら霖之助のほっぺに付いたご飯をとってそれをそのまま自分の口に……」

「んだよ、私なんてあんなシチュエーションになったこともないぞ」

 それに関してはただたんに霖之助のほっぺについたご飯を取るというよりも、霖之助にご飯を取ってもらう側だからである。

「あんたのことは別にどうでもいいんだけどさ……魔理沙は許せるあの子?」

「許せるわけないだろ」

「もうさ、こうなったらこうキュ~ッとやっちゃわない? 帰り道で闇討ちでもしてさ」

「ああ、いいなそれ。 後ろからなんか硬いものででも殴ればしばらくで歩けないようになるだろうしな」

 もはや完全に八つ当たりというか、ただの憂さ晴らしにしか聞こえないが、彼女たち自身は当然そのことに疑問を抱くことなどない

。ちなみにこの時の二人の顔は、今までに見たことがないほど禍々しいものだった。

「霖之助さん、これもおいしいですよ。はい、あ~ん」

「「……」」

 そうこうしているうちに店内では、早苗が更なる二人だけのラブラブワールドを作り上げていた。笑顔で箸を突きつけてくる早苗に霖之助は最初ほど困り顔を浮かべていたものの、最終的には少し恥ずかしがりながらもそれを口にする。早苗はそれに気をよくすると、次はこれをどうぞと次々と料理を自分の箸で霖之助に食べさせていく。その光景はもはや新婚というよりはただのバカップルの粋である。

「なぁ霊夢、もう帰り道とか言わず今すぐつぶさないか?」

「ええ、よくってよ魔理沙。ついでだからなんだかんだで鼻の下伸ばしてる霖之助も教育してあげましょうか」

「OK。 んじゃ、いくか」

「「まてぇぇぇぇいっ!」」

 暴走し始める二人を静止するかのように二つの声が割って入った。何奴っ?と二人が声に振り向くと……

「人の恋路を邪魔する悪の企み許しておけぬ、恋する少女(早苗限定)の味方、ジャスティス仮面フロッグ参上っ!」

「同じくキャノン参上!」

「んだよ、諏訪子に神奈子か」

「何してんのよあんたら。そんな変な格好で」

 守矢一家の残りの二人、洩矢 諏訪子に八坂 神奈子が仁王立ちしていた。それだけなら別にどうということもないのだが、二人はなぜかいつもの服装ではなく、全身タイツといういでたちでそこにいた。

「黙りなさい、早苗の邪魔……もとい恋する少女の邪魔はさせないわよ」

「邪魔しようってわけ? てかあんたらの大切な早苗に悪い虫がつこうとしているのよ、いいの?」

「愚問ね、あの子が幸せならそれが一番よ。ね、諏訪子」

「うん。ま、ぶっちゃけ神社の跡取りも欲しいしね」

「本音はそれかよ」

「というわけで邪魔はさせないよ」

「はっ、立ちふさがるんなら倒していくだけだぜ」

 どちらが動くのが早かったか、嫉妬に狂った二人の少女と二人の神との戦いが始まった。それぞれの弾幕が香霖堂の夜空を覆い、爆音や轟音が周囲に響き渡る。

「なんだか外が騒がしくないか?」

外で何がおきているか知るはずもない霖之助は、外から聞こえる轟音と窓から入ってくる閃光に眉をひそめ、何がおきているのか確かめようと立ち上がろうとするがそのつど早苗が“まあまあ、気にしなくても大丈夫ですよ”といいながら料理を自分の箸で食べさせようとしてくる。

「きっと正義の味方が人の幸せを壊そうとする悪と戦っているんですよ」

「なんだそれ?」

「あ、これもおいしいんですよ。はい、あ~ん」

 結果をいえば、外の争いは夜通し行われることになり、そのため早苗は霖之助に危険だからといわれて香霖堂に一泊することになるのだが、それが後々新たな争いの火種になることは言うまでもない。

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 はい、というわけでいかがでしたでしょうか。早霖という言葉で最初に浮かんだのが魔理沙から通い妻の称号を奪った光景だったのでそんな感じにしてみました。最初は早霖でラブラブ系をかきたかったんですが結局はギャグ路線になってしまいました。

 う~砂糖を吐くくらいのレベルのSS書きたいけど、書くの苦手なんですよね(大好きなんですけどね)。もっと練習せねば……。

 さなスイさん、期待してたのと違ってたらすみません。もしこんなシチュ読みたいとかあったらコメくれればそれで早霖もう1つ書きます。さと霖はもう少々お待ちくださいなるべく間を空けずにupできるようがんばりますです。

 

 ※一応SSのリクは常時どんどん受け付けてます。ただ、まとまった作業時間がなかなか取れないのでupは遅くなっちゃいますがそこはご勘弁を。リクの際は新しい日記にでもコメしてください。

カテゴリー: 小説 — yakai 15:41  コメント (1)

SS”バレンタインらしいです”

コピー本やっと終わった。でも寝る時間が全然無いよ(TT)

さて、というわけでSS”バレンタインらしいです”は今日のイベントに配るコピー本の本文になります。

ただ、コピー本貰ってくれた方の特典として一応 コピー本にはおまけみたいな部分がほんの僅かにプラスされてます。

さて、では前置きはこのぐらいにしましょう。

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    SS”バレンタインらしいです”

 その日は朝のうちから多くの来客が来るような気がしていた。朝起きたらお気に入りの湯のみが割れていたし、靴の紐が両足とも切れたり極め付けには屋内だというのに、どこからか入り込んだ黒猫が目の前を横切ったのだ。ここまで不吉なことばかりが重なると誰かのイタズラじゃないかとすら思えてくるが、ともかくこういうことが起こった日は必ずとも言っていいほど来客が多いのだ。これがまだ純粋な店の“お客様”ならば何の問題もないし、むしろ歓迎するところだが、残念なことにここでいう来客とは“客で無い客”と言うものに分類されてしまうらしい。
 客で無い客が多いと何が迷惑かと聞かれれば店のものを勝手に持って行ったり壊したりなども当然だが、第一に趣味である読書を邪魔されるのが迷惑だ。何せ客でない客である彼女たちは何をしに来ているのかは詳しくは知らないし、用件は様々だがただ統一されている部分がある。それは全員共、僕が相手をしないと機嫌を損ねるということ。これはとても面倒なことなのだ。なにせ、本来なら無理に相手をする必要が無いのに相手をしなければならないのだから。それはつまり僕自身は無視して読書を続けたいところなのに、そうするわけにもいかないということなのだ。何が何でも無視して読書を続けようとしたところで、大抵は途中で彼女たちに無理やり相手させられるハメにあうのだろうけど。
ま、そんなわけで来客が多い日というのは僕にとって面倒な日以外のなにものでもないのだ。
 しかもだ、壁に貼ってあるカレンダーを見ると今日の日付は2月14日となっていた。この日は毎年毎年、決まって来客が多いのである。
 だからこそ、僕は今全力で読書に打ち込んでいる。最初の来客が訪れる前に少しでも本を読んでいられるように。
 だが、そんな僕の意思を打ち壊すかのように、店の入り口が開いた。
 本日最初の来客のお出ましらしい。

~霊夢編~
 目だけを動かし入ってきた相手を確かめると、店の扉から入ってきたのはとてもよく見知った顔の紅白、香霖堂の客じゃない客の代表格の1人であった。
「1人目は霊夢か」
「こんにちは霖之助さん、どうかしたの? ていうか一人目って?」
「いや、こちらの話だ。 それでこんな朝早くから何のようだい?」
 ひとまず何をしに来たかは知らないが、とりあえずは客で無い客には違いないので目線を読みかけの本へと戻したまま用件を尋ねる。
「あ~何というか……その、今日は誰か私以外にもここに来た?」
「いや、君が最初の来客だよ」
「そ、そうなんだ……よかった」
 何がよかったなのか知らないが、そもそもうちの店に来客があるかどうかなんて別に霊夢には関係ないはずだが。
「い、いろいろあるのよ」
「そうかい」
 特に理由を知りたいとも思わないので、別にいいんだが。しかし……。
 読みかけの本から目を離して霊夢の様子を見るとなにやら霊夢の様子が普段と違う気がする。どこからしくないと言うか、顔も少々赤いみたいだし、もしかしたら体調でも悪いのやもしれない。それで看病をしてもらいにうちにやってきたということなのだろうか。
 妖怪と人間のハーフであるためか僕は人間の病気も、妖怪の病気もどちらもかかりづらいという体質なのである。そのため魔理沙や霊夢達が体調を崩した際に看病をすることになるの だが、だとすると少々面倒だが……
「しかたないな」
「霖之助さん?」
 まさか病人を見捨てるわけにもいかないし、看病してやるしかあるまい。読みかけの本を横に置き立ち上がる。
「今、布団を敷いてくるから大人しく待っていてくれ」
「ふ、布団っ!?」
 瞬間、霊夢の顔がゆでだこのように真っ赤になった。
「そ、それはちょっと色々と手順を飛ばしすぎというか、別に私そういうつもりで来たわけじゃないし……。こういうのは時間というより気持ちの問題だとも思うけど、それにしても早すぎるし、でも別に霖之助さんがしたいというなら私は……」
 あれほどに顔を赤くさせるくらい重症ならば八意女子を呼んできたほうがいいかもしれないな。
「とりあえず先ずは布団を敷いて、体を温めよう」
「温めるって、そんな……でもやっぱり私は」
「何を戸惑っているのかは知らないが、体調が悪いなら先ずは大人しく布団で横になるんだ」
「…………はい?」
 どういった理由かは知らないが、あれほどに真っ赤で今にも火を噴くんじゃないかという状態だった顔が1気に普段と変わらぬ様子に戻った。なにやら混乱しているのかなんなのか奇妙な表情を浮かべて硬直している。
「霖之助さん、何を言ってるのかわからないんだけど」
「様子がおかしかったから体調でも壊したのかと思ったのだが、違ったか?」
「違うに決まってるでしょっ!!」
 霊夢が両目を吊り上げてこちらを睨んでくる。どうやら彼女の機嫌を損ねてしまったらしい。
「私がいつ体調悪いなんていったのよ。ていうか紛らわしいのよ、勘違いしちゃったじゃない」
「勘違い?」
「あ、いや……」
 またしても顔を赤くして黙り込んでしまう。いったいなんだというのだろうか。しかし、体調不良でないというのならば霊夢はいったい何をしに来たのだろうか。
「霖之助さん、今日が何日かわかる?」
「? 2月14日だろ、それがなにか」
「これ!」
 そういって霊夢が押し付けるような感じで何かを渡してきた。 確かめると渡してきたのは綺麗にラッピングされた包みで、大きさは手のひらより少々大きいかというくらいだ。見た目のままを受け入れるならば贈り物というようにとれるが……。
「くれるのかい?」
「そ、そうよ」
 霊夢からの贈りものとなると、無用心に受け取ってしまったら後々に何らかの代償を請求されそうだが、霊夢の様子からするにいらないと返せそうな雰囲気でもないしここは受け取っておくことにしよう。何か代償を請求してきたらこれを返してやればいいだけの話しではあるし。それにしても中身はなんなのだろうか。
 綺麗なラッピングを丁寧に開いて中を確かめる。ラッピングの中には小さな箱が入っており、箱を開けるとそこに入っていたのは……
「これは、チョコレート?」
 大きなハート型のチョコレートだった。
「べ、別に、これといって特別な意味なんてないからね。 ただ、普段お世話になってるし、付き合いとしてはこういうのも必要だからあげる訳で、何も特別な意味なんてないんだからね」
 何を言っているのかよくわからないが、チョコレートねぇ……
「な、なによ。どうかしたの?」
「いや、こんな物をくれるよりも、少しでもツケを払ってくれたほうが助かるんだが」
  ブチッ。
「ぶち? って、うわぁっ!?」
 何かが切れるような音がしたかと思った次の瞬間、僕の前にいたのは見知った顔ではなく阿修羅も逃げ出しそうな形相を浮かべた霊夢が立っていた。

「この鈍感っ!」
 そういい残して破壊するかのごとき勢いで扉を閉めて霊夢が香霖堂を出て行った。扉を閉めた音とその扉が軋む音が店内に静かに響く中、僕はカウンターで霊夢の手形で赤くなった頬を摩る。
 なにやら霊夢の機嫌を損ねてしまったようだが、いったい何が悪かったというのだろうか。
 霊夢を起こらせた理由を考えようと頭を悩ませていると次の来客が訪れた。

~文編(なのかなこれ?)~
 時計の針が丁度3時を指した頃、丁度来客も途切れてひと息入れていた。なにやら年をかさねるごとに2月14日に訪れる来客が多くなっている気がする。隣に目を向けるとそこには様々なラッピングをされた色取り取りの包みが積まれている。しかも中身はすべてチョコレートだというのだから参ったものだ。どうせくれるのならマジックアイテムや外の世界の道具のほうがうれしいのだがな。ま、そんな事を言っていてもしょうがない、せっかくもらったのだしありがたく頂くことにしよう。
 包みの中から適当にひとつ取り開けようとした瞬間、それを妨害するかのようなタイミングで窓ガラスが外から破られた。
 ガラスの割れる音とその破片と一緒に新聞が床に落ちる。
「…………」
 何もなかったかのように新聞を拾い上げ、窓の外を睨むと窓ガラスを割った犯人が飛んでいく姿が見えた。もう慣れたといえば慣れたが、天狗たちは店の窓ガラスを割って配達しないと死んでしまう病気にでもかかっているのだろうか。
 まぁ天狗に対する不満なんて考えてもしょうがないことだし、せっかくだから配達された新聞でも読むか。
 そう思い新聞を広げると、その表紙に新聞の包みからラッピングされた包みが床に転がり落ちる。確かめなくとも想像はつくが一応拾って中身を確かめると、中身は案の定チョコレートだった。
 まぁ、新聞を読みながらでも頂くとしよう。とりあえず先ずは新聞である。さて、今回はどんな記事が載っているのだろうか。
 新聞の一面に目を向けたその瞬間、はたまたタイミングを狙ったかの用に入り口の戸が叩かれた。
「またか……」
 どうやら今日は何かをしようとすると必ず邪魔が入る日らしい。

~魔理沙編~
 木箱。それが扉を開けて最初に目に入ったものだ。高さは僕の胸より少し低いくらいで、人一人が何とか入りそうな木箱だった。誰が持ってきたのかとあたりを見渡すがそれらしい人影はない。
 いったい誰がと考えていると、木箱に一枚の紙が貼り付けてあるのに気がついた。紙にはなにやら文字が書いてあるようで、手にとって読んでみるとそこには。{最高のプレゼント 魔理沙から香霖へ 注意:無視したり、捨てたり、放置したり、処分しようとしたら許さん}と書いてあった。
 どうやら、これは魔理沙からの贈り物らしい。
さて、どうしたものか。はっきり言うとこのまま無視するか処分してしまいたい。毎年2月14日には魔理沙から贈り物を受け取っているのだが、去年もらったのは確かチョコレートでコーティングされた怪しげな茸だったか。あまりにも怪しかったからそのまま放置していたら、後からやってきた魔理沙に散々怒られた挙句に無理やり口の中にねじ込まれた。
ま、簡潔に言ってしまうと、この紙に書いてあることに従わない場合後々とても面倒だということだ。
 というわけで無視も処分もできない以上店内に運ぶしか選択肢は残されていないわけで、ため息を吐きながら仕方なく木箱を店内に運び込もうと持ち上げる。
「うっ、意外と重いな。何が入ってるんだいったい」
 大きさや重さからして巨大茸のチョコレートコーティングとかじゃなかろうな。木箱の中で胞子を撒き散らすチョコをまとった巨大茸の姿を創造する。寒気、鳥肌物であった。
 なんとか店内に木箱を運び込むと、適当なところに木箱を置く。
とりあえず、店内に運んだはいいもののどうしたものだろうか、どうするにしろ中身を確かめないと始まらないが、あまり開けたくない。悩んだ挙句、結局は開けることにした。何が飛び出してもいいように注意しながらゆっくりと木箱の蓋を開けていく。
 蓋が開いてそこから出てきたもの、それはチョコレート加工された巨大茸でも怪植物でもなくよく見知ったものだった。
 箱に入っていたのは黒白の魔法使い、魔理沙だった。何をしたいのかはわからないがいつもの黒白の格好に全身にリボンを巻いて箱の中に入っていたのだ。魔理沙がどうだっ!といった表情でこちらを見ている。
「どうだ香霖、最高のプレゼ……って、なにを無言で蓋しようとしてるんだよ」
 閉めようとした蓋を止めながら、魔理沙は木箱の中から出てきた。
「まったく、なんだって言うんだよいったい」
「それはこっちのセリフだ。いったい何してるんだ?」
「何って決まってるだろ、最高のプレゼントだぜ」
 そういって魔理沙はその場でクルリと回り、リボンが巻かれた全身を見せてくる。
「プレゼントって魔理沙がかい?」
「おう、どうだうれしいだろ?」
 正直頭痛がしてきた。自分をプレゼントって何を考えているんだ。
「どうしたあまりの嬉しさに固まっちまったか」
「いや、別に。 そういえば君はチョコレート関係じゃないんだな」
「まったくせっかちなやつだな。慌てるなよ今用意してやるから」
 用意、ということはチョコレートもあるということだろうか、見たところそれらしい包みも何も持っていないようだが、まさかここでチョコを作ろうというんじゃないだろうな。そこまでして、というか別に何もいらないから静かに新聞を読ませてくれないだろうか。そう思っていると魔理沙はポケットから小さなチョコレートを取り出すとそれを唇にくっつる。チョコはそもそも解けかけていたのか魔理沙の唇に触れるとその温度で溶けて、魔理沙の唇に薄っすらと液状のチョコレートを残す。そんな調子で唇全体に(実際には頬など色々なところについてはいるが)チョコレートを塗りたくる。
「さ、準備できたぞ?」
「?」
 準備も何も魔理沙はチョコを自分に塗りたくってただけじゃないか。
「鈍いやつだな、いっただろプレゼントは私だって。だからチョコレートは私だってことだ。遠慮せず舐めていいぞ……って、おい何で新聞を広げて読もうとしてるんだよ」
 読もうとしていた新聞を取り上げられてしまった。しかたない、さっき読んでいた本の続きを読むか。そう思って探すがその本も新聞同様に魔理沙の手に握られていた。
「お前な、今のはいくらなんでもレディに失礼じゃないか」
 そういう魔理沙の表情はご機嫌斜めなようだった。
「少なくとも僕の知るレディは顔中にチョコを塗りたくってないし、自分をプレゼントだとか思う存分舐めろだとかいう、頭のおかしい発言はしない」
「なんだよ私のプレゼントに不満があるってことか?」
「不満だらけだ。冗談にしても馬鹿すぎるぞ」
「なんだよせっかく2月14日だから、勇気を振り絞ってやったってのに」
 その勇気の使い方は誰がどう考えようと間違っているとしか思えないんだが。しかし、また2月14日か。
 今日ここに訪れた少女たちから共通して聞いたキーワードが1つある。それが“2月14日”だ。これについては誰かに聞こうとしていたんだが……。
「魔理沙、聞きたいことがあるんだが」
「なんだよ」
 まだご機嫌斜めなのか魔理沙の声には少し棘があった。まぁ、それはこの際おいておくことにして。
「前々から聞こうとは思ってたけど、なんで毎年2月14日にチョコをくれるんだ?」
「そりゃ、バレンタインデーにはチョコって決まってるからだろ」
「バレンタインデー?」
「……お前まさか、バレンタインデーがなんなのか知らないんじゃ」
 まさかも何も初めて聴く言葉なのだから知らなくてもしょうがないだろう。魔理沙の口調からするとだいぶメジャーなイベントのようだが、いったいどういったイベントなのだろうか。知り合いにチョコを配る日? だが、それにしては魔理沙や霊夢達がチョコを貰うのは見たことがないな。それにそこまでメジャーなイベントであるからにはこのチョコレートには何らかのメッセージか意味が込められているはずだ。そのあたりも教えてくれるとありがたいのだが……
「魔理沙、どうかしたのか?」
 目の前の魔理沙の目線はとても冷え切っていた。これは常識を知らない無知を哀れむ目とかそんなものではない。生物の最下層、汚物でも見るかのごとき視線だった。
「最低だなお前」
「はい?」
 いったいなんだというのか、バレンタインデーとやらを知らないのはそれほどまでに罪なことだとでも言うのか。「帰る」とだけ言い残して魔理沙が帰った後も夜遅くまで僕は悩み、バレンタインデーについて調べたが答えはわからなかった。

 ちなみに霊夢や魔理沙の機嫌が直るまで約2週間かかり、その間あの冷ややかな視線を受け続けるはめになるのだが、それはまた別の話。

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 いかがでしたでしょうか。個人的にはもっと時間をかけて書きたかったんですけど、なかなか時間が…

 一応、このSSには他にも何パターン化のオチがあったんですけど、時間の関係でこのオチになってしまいました。

 補足として:コピー本には上の内容に超短いて妖夢編も入っています。(←ページ的には1ページもないw)

カテゴリー: 小説 — yakai 05:06  コメント (0)

コミケ2日目

はいというわけで楽しんできましたよ2日目。当初の予定通り香霖が出ている同人誌を買いあさってきました。いやはや財布はピンチですが、後悔はしてません。

さて、そこまではいいのですが。実は今ですね今夜泊まる予定のカプセルホテルが見つからなくて熱烈迷子中なんですよ。

ケータイの電源も切れてどうしようもない状態だったのでネカフェで場所を調べるついでにブログを更新しているのが現状。

ま、場所もなんとなくわかったんで大丈夫ですかね。

さて、今日は日記だけではなくSS(短すぎる気がするけど)も載せます。

出発前にあわてて書いたので誤字とかがありましたら勘弁してください。(kaiは漢字があまり得意ではありません)

内容は香霖×魔理沙で年末ネタです(大晦日の話です)。

よかったらこのSSのほうもご覧になってください。

”大晦日”

12月31日の夜。新年が目の前まで近づいた年の瀬の大晦日。あと少しで新年を迎えようだというのにも関わらず、香霖は普段と変わらずいつものように店で読書をしていた。いや、正確には読書をしようとしていたというのが正しいだろうか。
「なあなあ、それどんな本なんだ? 面白いのか? そんなのよりさ」
「……」
読書をしようにも暇を持て余した魔理沙がしきりに話しかけてきて読書に集中させてくれないのだ。彼女が店にやってきたのは夕方の事だ、魔理沙の作った夕食を2人で食べ、食後しばらくは店の売り物で遊んでいた魔理沙だったが、あらかた遊びつくしたのか少し前からこの調子だ。まぁ魔理沙が店に来た時点でこうなることは想像してはいた。何年か前から、魔理沙が実家を出た後からだろうか魔理沙は毎年大晦日の日になると、こうして店にやってきては共に大晦日の夜をすごしているのだ。そして毎回今日のような感じで暇を持て余した魔理沙の相手をさせられることになる。そのたび読書が中断されることになるのだが、さすがに慣れた。あまり慣れたくはないが……
しょうがなく顔を読みかけの本から魔理沙の方に向ける。自分の方をじーっと見つめる魔理沙の目は”暇だから遊んで~”オーラをこれでもかというくらいに発していた。これもいつもどうり、それはともかく……
「毎年毎年、君もよっぽど暇なんだな」
「私は暇じゃないぜ香霖。暇じゃないが大晦日の夜に1人じゃさびしいからわざわざ来てやったんだぜ」
「1で寂しいなら霊夢の所とかでもいいじゃないか」
「? 何言ってるんだ香霖、1人じゃ寂しいってお前が寂しく思ってるだろうからってことだぜ」
いやはや、どうやら魔理沙は大晦日の日に店で1人じゃ香霖が寂しいだろうから忙しい中わざわざやってきているつもりらしい。こういうのもなんだが別に香霖は魔理沙がこなくても寂しくは思わないだろう。そもそも大晦日自体が普段の平日と何ら特別には感じない。まぁ要は結局、魔理沙自身が大晦日の夜に1人では少々さびしいのだろう。
「魔理沙、寂しいなら霧雨の家に……」
「ストップ! それ以上はタブーだぜ香霖」
霧雨の名前が出た途端に即座に言葉をさえぎられる、やはり少々藪蛇だっただろうか。
「そもそも私はお前が1人じゃ寂しいだろうから来てるって言ってるじゃないか」
「それはどうも。しかし別に寂しいとは思ってないから、暇なら今からでも博麗神社にいったらどうだい」
「”本当はお前と一緒に年越ししたいからだってことくらい察しろよな”」
「ん、なにか言ったかい?」
「いや、なんにも。この鈍感!」
「?」
いきなりなんだというのだ。なにやら少々機嫌を損ねているようだが、気に障ることでも言っただろうか。霧雨の話を出した事か?だが霧雨の事はたまに口にしては先ほどのように遮られることはあっても、それで機嫌を損ねたことはない。では他に何か気に障るようなことを言っただろうか。
考えたが思い浮かばなかった。考えてもしょうがないと思い再び読書に戻ろうとして……
「てりゃ!」
魔理沙に本を取られたため読書ができなくなった。もう今日の読書は諦めた方がいいらしい。
香霖はいいところだったのにと少々不機嫌そうに魔理沙の方へ向き直った。
「あのな香霖、こんな美少女がわざわざお前のために来てやったって言うのに少し失礼なんじゃないか」
「美少女うんぬんは置いといて、素直に暇だから構ってくれと言ったらどうだい? まったく読書くらいさせてくれ。それで、何をすればいいんだい?」
「ん~、それも悪くないけど普通にいつものように何気ない会話とかでもいいぜ」
ただいつものようにのんびりと会話するだけでいいのならば、別に本を読みながらでもかまわないだろう。そう思い香霖は先ほどとられた本に手を伸ばしたが再び魔理沙に奪われる。見ると魔理沙はまた不機嫌そうな顔をしていた。
「そんなんでいいのか?」
「おう、なにも特別なことをする必要はないぜ」
そう言って魔理沙は香霖から奪った本をていっと店の隅に投げ捨てた。読書の邪魔うんぬんの前に、まず本を大事に扱ってはもらえないだろうか。
しかし、本当にこちらの気を知らないというかなんと言うか、本を奪われ不満顔な香霖をよそに魔理沙は先ほどの表情とは一転した笑顔だった。
「大晦日の夜は家族でのんびりとすごすものだからな」
「家族?」
「おう、大晦日の夜に何をするでもなく、のんびりと仲良くすごすなんてまるで家族つうか、あれみたいだろ、そのふふふふふ、夫婦っていうか」
後半はなにやら小声でよく聞こえなかったが、なるほど家族かそういわれれば確かにしっくりくるように感じる。
「ふむ、確かにあたらずとも遠からずってところだな」
「え?」
「僕が一緒に過ごす相手で一番多くの時間を共に過ごしているのは君だろうしね。家族と言われても違和感はあまりないしね、そうまるで…」
「香霖、それって」
「まるで兄妹のように」
「……」
なぜかそう言った途端魔理沙のうれしそうだった顔が急変、不機嫌極まりないといった表情になっていく。なんだ、また何か怒らせるような事を言ったのか?
「魔理沙どうかしたのか?」
「いや~別に~(ああ、そうだよなこういう奴だよなコイツは、でも普通そこで兄妹って言うか? そこはふ、ふふふ夫婦とかさ少しくらい気の利いたこと言えよな)」
「? なにか気に障ったのならば誤るが、僕は何か悪いことを言ったか?」
不機嫌になる直前に僕が言った言葉は確か”兄弟のように”だったか。不機嫌になったのはこの言葉の後だから原因はこの言葉と考えていいのだろうけど、魔理沙のことを妹のように思ってると言ってことがそんなに悪いのだろうか。魔理沙だけに限らず霊夢や妖夢などのことを手のかかる妹のようだと思っていたこうりんだったが、それは彼女たちにとっては不愉快な事だったのだろうかと首をかしげる。
いやそもそも、家族という単語を出してきたのは魔理沙のほうだ。ならば彼女が不機嫌になる理由として先ほどの言葉は当てはまらないだろう。
「もう知るか、香りんのバカ!」
なんだというのだろうか。

なんとか魔理沙の機嫌を直し、一息入れるころにはもう新年まで10数分という時間になっていた。
先ほどのお詫びということで作った年越しそばを二人で食べる。
「そういや相変わらずこの店は散らかってるな。年末なんだし、大掃除でもしたらどうだ?」
そばをすすりながら魔理沙が尋ねる。
「これでも大掃除はちゃんとしたよ」
「そうなのか? 全然変わってないように見えるが」
確かに大掃除はしたのだが、魔理沙のような客じゃない客が来るたびに商品をいじっては散らかすのでまったく効果がなかっただけだ。とは思うがけっして口には出さない。そんなことを言っても知らないと返されるか、また不機嫌になるだけだろうからだ。それにだ、大掃除といってもそんな本格的にやったわけではない。せいぜい棚を整理し、商品の埃を払ったり、窓を拭いたり程度しかやっていないので、散らかされたといっても大して違いがあるわけでも無いのも事実なのだ。
「お、年が明けたな」
魔理沙の言葉に傍らの時計に目を向けると、確かに時計の針は0時を過ぎていた。いつの間にか新年が始まっていたらしい。
人間の里では除夜の鐘なりなんだりが新年を告げてくれているのだろうが、あいにくこんな人里はなれた魔法の森のそばにそんなものを知らせてくれるものなど存在しない。
「今日はこの後どうするんだい魔理沙?」
「んぁ、ほひろんほまって」
「飲み込んでから喋ってくれ」
「ゴクン……ふぅ、もちろん泊まってくぜ。今日はここでお前と一緒にいるよ」
といって再び魔理沙はそばを食べるのに戻る。はっきり言ってしまうと魔理沙の答えは聞かなくてもわかっていた。大晦日の日に来てそのまま一泊し1日は1日中僕のそばにいるというのも、これまた毎年のことなのだ。故にもうすでに魔理沙が寝る用の布団は奥のほうにもう用意してある。
「別にかまわないが、新年のあいさつ回りは言いのかい? 君は知り合いも多いだろうし」
「そんなの、会ったときに適当にすればいいんだよ。お前のために一日中一緒にいてやるんだから感謝しろよ」
また、1人ではさびしいだろうから一緒にいてやるということなのだろう。だけど……
「心配しなくても年始の挨拶で霊夢や文、咲夜達や妖夢、優曇華達と今日は来客も多いだろうから、さびしいどころかむしろ忙しいくらいだよ」
もちろん、それで読書の時間がつぶされるのは考えるまでも無いことだ。ついでに霊夢がきたら博霊神社の宴会に強制連行させられるだろうから一人の時間などほとんど無いだろう。誘ってくれるのはうれしいのだが、できれば1人でゆっくりすごさせてほしいのだがなと香霖は思う。
「だから、ライバルがいっぱい来るからいらん虫がつかないように見張るんだろうか」
「何か言ったかい?」
「いんや、何でも無いぜ。てか少しくらい気づいてもいいだろうに、お前いつか女性に後ろから刺されるぞ」
「なんのことだ? さっきから君の言葉の内容が少々わからないのだが」
「香霖がしょうがないやつだって事だよ」
「?」
なんだというのか。
変な事で腹を立てたりなど今日の魔理沙はいろいろとおかしい。
まぁ、放っておけばそのうち機嫌も戻るだろうから、深くは聞かないでおくが。
「ああ、そうだ魔理沙、大切な事を忘れていたよ」
「?」
「あけましておめでとう魔理沙。今年もよろしく」
「……たくっ、しょうがないな香霖は」
魔理沙はそういって笑う。なにかおかしい事でも言っただろうか。少なくとも僕は普通に新年の挨拶をしただけなのだが。
「いや、そうじゃないぜ香霖」
「?」
「あけましておめでとうだぜ。今年もよろしくな」
そういう魔理沙の表情はとても機嫌の良さそうな、花が咲いたような笑顔。この数年、僕に毎年新年とともに訪れる笑顔だ。
また騒がしくもどこか楽しい1年が始まった。

魔理沙_こうりん

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